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ゆり

Author:ゆり
はなわゆりの恋愛小説ブログへ
ようこそ!!


ちょっとエッチな恋愛小説を
書いてみました。

あくまで純愛小説です♪

Yブログが本館ですが、ファン限定記事が多いため、
こちらのブログを設置致しました♡


こころゆくまでご堪能ください♡

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kira-46wa

                                      第1話から読む方はコチラ





散々泣いたが、かかってきた電話でクミは本来の自分を取り戻した。

辞令を受け取ったばかりの興奮した夫からだった。


「やったよ!転勤だ!ニューヨークだ!!」

「本当?本当に?本当なの?」

「本当だよ。4月からいきなり支店長代理だって!!」


クミは頬を震わせて、また涙を流した。心なしかタカシの声も涙ぐんでいる。


「おめでとう!!!すごいわ・・・良かったね・・・」

「やっとクミの夢が叶えられる。もう会社で叫びそうだったよ」

「お祝いしなきゃね。ご馳走を作るわ。早く帰ってきてね」


どっちにしても、ハルトとは別れる運命だった・・・。

これでいいの。よね。



早々と帰ってきた夫の顔は、もう落ち着いていた。それどころか、いつもと何処か

様子が違う。背広を脱いだタカシはクミの肩を強く掴み、目を交互に見た。

クミは、その目の奥の色を何処かで見た気がした。


「引越し、どうする?」

「どうしたの?今すぐにでも行きたい。・・・ねぇ、痛いわ」

「別れられるのか?」

「えっ・・・」

「別れられるのか?あの男と」

「な・・・何の事?」

「いいんだよ。隠さなくても。もう全部許してる」



ハルトが告げたんだろうか。それとも・・・



「俺にはそれが出来る。忘れられる。今までの事も全部」


妻の夢を叶えた自分は、今こそ何をしても許されるクミの神になった、と

プレッシャーやコンプレックスから開放されて、タカシは笑みを浮かべた。


どうして笑うの?なんか怖い。

怒ってくれた方がまだ救われる。




タカシはしたかった事のきっかけを作る為だけに かまをかけたのだが

狼狽するクミの顔で疑いは本当だったと知った。

猛烈に嫉妬心が湧き、こらえていた本当の気持ちが噴き始める。


「俺にも隠してた事がある。知りたいか?」

「知りたい。タカシの事、全部教えて」



 ―とうとう始まるのね―    教えてやるよ。本当の俺を今すぐにな。



「俺達やりなおそう。初めから」








タカシがネクタイを外し、反射的に受け取ろうと出した手首にそれが巻かれた。








「だけどその前に」













「悪い嫁には、お仕置きが必要だな」














俺が本屋で働いてた時、こんな事が好きな男だなんて思った?


あの部屋での、縄を掛けながらの、いつかのハルトの声が甦る。


だろ?普通の仮面被って、実は変態な奴多いはずだよ。

クミだって、最初は嫌がってたけど、今はもう普通じゃ満足できないだろ?


あの本の、縄で縛られ恍惚の表情を浮かべた女の顔が、自分に重なる。

興味本位だったハルトと違い、夫は麻の縄でクミを強く縛り上げた。


もっと打って。私みたいな女、本物の鞭で強く打たれたっていい。

体がハルトを忘れられない。きっと永遠に。甘んじてその罰を受けます―


そうだよ。その顔だよ。俺に怯え、許してと懇願する顔がずっと見たかった。












妹を帰したハルトは、二人が愛憎に溺れるうちに忘れてしまった

クリスマスの頃に買った花が枯れている姿を もう一度確認した。


「可哀想に」


クミに例えた花が、堕ちてくるのを待ち続け、与えられなかったきらきらとした

滴の代わりに、投げて返されたアンクレットを 彼はそっと巻きつけた。









                       完




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きらきら堕ちるは完結しました。
長い間ご愛読ありがとうございました。
心より御礼申し上げます。


                          はなわゆり


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テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

kira-45wa

                                      第1話から読む方はコチラ




「いいのに。ミカさんと居てあげて。ね、ね、ハルト私達」

「あぁそれと。さっきクミんちの郵便受けにプレゼント入れといた」

ハルトはクミに話させまいと必死で、間髪を入れずに、その度に声を大きくする。


「どうして?」

「アンクレットだよ。プラチナの。婚約指輪の代わりにね。

買ってきたてだよ。ずーっと身につけてて欲しい」



クミの気持ちの変化を 知らない振りをし続ける事で、繋ぎ止められると

信じている口ぶりだった。


「婚約?って?ねぇハルトってば聞いて、私ね」

「ごめん、もう時間ないんだ。帰ったらゆっくり逢おうぜ」


一方的に切られ、かけ直すと、もう電源は慌しく切られていた。

がっくりと肩を落として、心の奥底からため息をついて開けた郵便受けには

丁寧に包装され赤いリボンのかかった箱が『開けて』と自己主張をしている。

あんな事があった後でも、ハルトの中で自分の存在が大きく育っていたのが

不思議だった。嫌われたい。はっきりとそう感じた。


ずっとこんな風に続けていくの?苦しいだけじゃない・・・


家に戻り、ためらった後、冷たく滑らかな銀色のアンクレットを取り出した。


「あっ」

空で留めようとすると、指からこぼれ、光を放ちながら床に吸い込まれていく。

その姿は、スローモーションのようにクミの目に焼き付けられた。


ごめんなさい・・・つけられない。でも好きだった。嘘じゃない、本当に。

官能の世界も素敵だった・・・どんな事をされても嫌いになれなかった。

―そうだ。今から行こう。あの部屋に。これを返しに。逢えるかも知れない。


クミはそのアンクレットを一度も足首に巻かないまま包み直し、タクシーを拾った。


いる気がする。

いて。お願いだから。私に別れを言わせて。謝らせて。



駐車場にハルトのバイクを見つけ、居るのを確信し慣れた部屋の鍵を回した。




「あれ?誰か来たんじゃない?」


知らない女の声が聞こえて、クミは暗い玄関で立ちすくんだ。

二つの靴がある。ハルトと、もう一つは明らかに若い女の履くミュールだ。

ベッドだけの部屋から覘かせた顔は本屋で見て覚えていたミカの顔では無い。

ハルトが後から顔を覗かせた。


「クミ?びっくり。初めてじゃん。一人で来たの」


こっちに向かって歩いてきた顔が、クミにはどんな表情なのか逆光で

分からなかった。


「何してるの?入れよ」

「ばっ馬鹿じゃないっ?入らないわ。3Pでもするつもり?」


真剣に悩んで、泣いたわ。

さっきまで、泣いてたわ。馬鹿みたい。最後まで。



ハルトと女の笑った声が自分を馬鹿にされたと感じた。


「別れを言いに来たの。最低よ・・・アンタなんて。

さよなら!こんなものいらない。鍵も返す」



近づいてきたハルトに、クミは二つの物を投げつけた。


「二度と逢わないわ。電話もかけてこないで。家にも来ないで」


帰りかけたクミに、残酷な気分になったハルトが後ろから言った。


「そんなに怒るなんて。まだ俺の事好きだったんだ?」

「え?」

「で、自惚れてた。自分だけ愛されてるって。俺が本気で?」

クミの唇が奥歯をかみ締めた為に震えた。


「安心しろよ。もう二度と逢わない。電話もしない。家にも行かない」


クミは目を閉じて、下唇を噛み涙をこらえた。


「さよなら」

ハルトはクミの肩を突いて押し出し、ドアを閉じて鍵も閉めた。









「あーらら。お兄ちゃん、追いかけなよ。誤解じゃん」


「黙れ」





もう終わってたんだ。謝られるぐらいなら、こっちの方が俺らしい。






どこをどうやって帰ったのか、クミは自分のベッドで声をあげて泣いた。







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                                    第46話 最終回へ

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

kira-44wa

                                      第1話から読む方はコチラ



クミは、急いでシーツを剥がし、2回目の洗濯を始めた。

何かしていないと泣いてしまいそうで、

一度涙を落としてしまうと、そこから二度と立ち上がれなくなる気がして、

夢中で家の中を駆け回り家事に勤しんだ。

窓も鍋も全て磨き終わってしまって手持ち無沙汰になり、本を開いたが

ハルトの言動で埋められた頭の中には一行も、一文字すら入ってこない。

いつもと違う事をしようと、夫がいつも使っているPCを何気なく開いてみた。

セツコが楽しいと言ったオークションや、有名人のブログ等、適当にクリックを

繰り返して行き着いた所で、夫のEDを思い出してしまった。

不妊の病院を探したように、夫の為の病院も探そうと思ったが、その行為が

差し出がましく、夫をまた傷つけてしまう気がして、違う事を思いついた。


携帯の履歴は消されてたけど、こっちは?


夫のナイーブな内面を今度こそPCが教えてくれる気がして、ボタンを押した。

クミはPCを使わない、と思い夫は油断をしていたのだろうか。

クミの願い通り、タカシの秘密の性癖の跡は全て残されていた。



まさか―そんな!知らなかった。いつから―?






クミの携帯がメールを受信した。


『ミカが手首切った。今病院。ごめん、暫く連絡できない』

ハルトからだった。






そのままずっとハルトの電源は切られていて、連絡が取れない状態が続き

別れの話は宙に浮いたままだった。こんなに連絡の取れない事は初めてで

ハルトがどこかに潜んでいるのかも、と怯えながらの毎日にクミは疲れ

このまま自然消滅出来ればいいのに、と勝手な事を考えていた。

連絡が取れない事で『死んでいない』と分かるので、最初程心配はしていない。


死んでないから、連絡が出来ないのよね。そうよね?


そういうやり方でしか、自分から離れる男を引きとめられない憐れな女を

クミは学生の時から、何人か見ていた。他人事だったのがいきなり降りかかり

ミカにもハルトにも同情し、ただひたすら、自分の心変わりを責め続けた。


ああ、もうどうしたらいいの?私の馬鹿。みんな私のせい。

時間を戻せたら。もう二度とこんな馬鹿な事はしないのに。



あの日以来、夫はスキンシップに富み、愛が戻りつつある事が感じられる。

だがもちろん、PCの履歴をみてしまった事は、クミの胸に秘めたままだった。







クミの携帯が鳴ったのは次の金曜日の昼だった。


「久しぶり!あぁやっとクミの声がきけた」

「ミカさん、どうなの?」

「大丈夫。死ぬ気なんて、はなから無いよ。

でもマジで大変だったぁ。殴っちゃった事がばれて

俺の親父にも、ミカの親にも殴られたし」


「殴った?ひどいわ。どうしてそんな事したの」

「クミも皆もアイツのキレっぷりを知らないから

そんな事言えんだ。酷いんだって。マジで。

俺だって何度も殴られてんだぜ?」


「だからって」

「でも、ずっと側にいたよ?今までずっとだよ?

1日入院しただけで、後は家だったんだけど、

俺が見えなくなると、半狂乱になるから」



安心して。かえしてあげる。ハルトを


「今、やっと引越しと旅行の用意するからってお許しを頂いて

一人で自分ちに帰ってきた所。ハワイまでに逢いたかったけど

引越しもあるし、無理っぽいんだよねぇ」


「・・・ねぇ、ハルト」

「ホント、ごめん!帰ったら、一杯埋め合わせする!

お土産も買ってくるよ。ミカの目を盗んでね♪」



ハルトの中では、時間が止まっているようだった。いや、むしろ

時計を逆に回していた。クミがハルトを好きだった時まで。







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                                       第45話へ

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kira-43wa

                                      第1話から読む方はコチラ





「俺さ、将来の事考えたんだ」


間髪を入れずに、ハルトが大きな声で言った。


将来?ハルトの将来に私は居ないわ。


「4月から親父の所で働くじゃん?

家を出て一人暮らししろ、だって。

だから、あの部屋に引越しする。いつでも来ていいよ。

鍵はクミしか持って無いから、大丈夫。

ご飯とか作ってくれてたら嬉しいな」


「ハルト」


クミが何とか口を挟もうとするが、ハルトはそうさせない。


「俺の母親、俺が8歳の時に病気で死んだんだよね。

今の母親は3人目だけど、親父、俺が18になるまで

男手一つで俺と妹を育ててくれた。 怖いけど、

尊敬もしてる。だから親父が始めた会社を継ぐ。絶対に」



一体、何が言いたいの?


眉根を寄せて話を聞くクミを見て、ハルトがやっと笑った。


「俺ってどっかの国の皇太子みたい。あんなに若くて綺麗な

奥さんよりオバサンをとるなんてバカな奴って思ってたけど

今なら分かる気がする」


「?」

「最初にいきなりあのオバサンとの結婚は

認めてもらえなかったんだ。親にも周りにも。

あ、奴の場合は国と世間か」



突拍子も無い話に、クミの頭が追いつかない。


「俺、自分が奴みたいだな~とか思っちゃった。いきなり7歳も

年上でバツイチの女連れてっても、頭の堅い親父は結婚を

認めてくれない。一族だってそうだ。古い奴ばっかだし」


「結婚?そんな。勝手に決めないでよ」


ベッドに横たわったハルトは、やっと口を挟んだクミを睨んだ。


「考えただけだよ。大人しく聞けって。無理矢理結婚も

アリだけどそれだと会社から追い出されるかもって。

今更、他で働く気無いし」


「何考えてるのよ・・・」

絵空事が可笑しくて、クミは不謹慎にもつい噴出しそうになった。


「真剣に考えた訳じゃなくって、なんとなく、だってば。

だったらさ、奴みたいに何年もたってから結ばれるって

のもロマンチックでいいかな。なんてね。

俺が実権を握った頃だったら誰にも文句は言わせないし、言われない」



とうとうクミは笑ってしまった。ハルトがとても可愛い子供に思えてしまった。


「笑うなよぉ。そういう約束があれば、元の俺に戻れる気が

する。元の自分に戻りたい。今の俺って情けなすぎじゃない?

マジ嫌だ。だから・・・約束してくれない?

いつか俺と結婚するって。今すぐじゃない。

そうだな・・・20年後ぐらいに」



そんな事は世間知らずな子供が見る夢物語で、実現するはずがない。

ハルトもそれを分かっていながら、言っているのがクミには見えた。


あんなに好きだと思ったのに・・・。もうその時の私は遠い昔みたい。


将来の話をしながらも、二人の顔と声のトーンは別れ話の後そのものだ。

ハルトはそれらを払拭する為に、答えを聞く前に明るい声を出し話を変えた。


「あ、そうだ♪再来週からハワイに行くんだ」

「卒業旅行?いいなぁ」

「いつもの仲間でね。でも金曜日が二回も入ってるんだよな」

「・・・そう・・・」


嫌われた方が気が楽。こんな事を思う日が来るなんて・・・


「あのさ、今日実は、ミカの家からなんだ」

もうそんな話を聞いても、クミの石は大きくなるどころか、何処にも無い。


「コンビニに行くって出て来たから戻らなきゃ。後で電話する」

「指輪、返して」

「ちぇっ覚えてたか」


ハルトはポケットからクミの結婚指輪を出し、一度外に投げる振りをしてから

笑ってクミの掌に返し、ミカの家に向かった。





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                                       第44話へ

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kira-42wa

                                      第1話から読む方はコチラ




「縛られたいの?その方が燃える?」


クミは首を横に何度も振った。


「そう?じゃあエプロンのまま犯しちゃおうかな」

「お願いってば。やめて!!」

「やめたら怒る癖に。あ・・・っゴミ箱にティッシュが!!」


ハルトが見つけたティッシュは、クミの悦びの涙を吸い取っただけの残骸だ。


「やってない、とか言ってやってんじゃん!」

「違うの。違うの」


「何が違うんだよ。俺に嘘ばっかり言いやがって」


「やめて。お願いだから」

「俺、昨日も苦しくて眠れなかった。それなのにクミは」


ハルトはクミのパンティを横にずらして、昨夜クミが得られなかったモノを挿入し

自分の胸を本気で押す細い手首を握り、ベッドに強く押し戻した。


「いや!もういやなの!お願い」

「ひどいよ。最低だよ。また電源切ってるし」

「それは」


ハルトがクミの舌を激しく吸う。ぐいぐいと黒子が押し付けられる。

今までは、そんな事をされるとすぐに、喘いだ声を上げていたのに

閉ざしてしまった心のままでは、苦痛でしかない。


「いけよ。いつもみたいに。あの顔を見せろよ」


もうハルトの声も匂いも、クミを陶酔させなかった。

一欠けらの魔法も残っていない。

まだあるのは情だが、それさえこの行為で消えつつある。


どうしてこんな男に堕ちてしまったの?ピルまで飲むなんて・・・

馬鹿としか言いようが無い。



「なんで泣くの?泣きたいのは俺なのに」


クミがハルトを見上げると、涙を堪えるような苦痛に歪む顔があった。


「見るな」


ハルトは挿入したまま、クミの上に倒れこみ顔が見えないようにした。


こんなのハルトじゃない・・・

もっといつも自信満々で、高飛車で、陽気で、綺麗で、

そして残酷なサディストで



「ミカと別れるよ」

「やめて、そんな事」

「なんで?別れて欲しいだろ?他の女も切る」

「そんな事・・・駄目よ」

「だって、クミがおかしい。感じてない」

果ててもないのに、ハルトはクミから抜いた。


「アナルの方がいい?」

「違う、待って。話がしたいの」

「何の話?」

「昨日、ミカさんから電話があったの」

「へー」

「へーって!すごい剣幕で・・あぁっいややっやめてっ」

「やっぱこっちだったんだ?」

クミは、初めてハルトの前で感じる振りをした。

早く終わって欲しいが為に、ハルトの好きな顔をして、卑猥な声を上げた。








「ミカにこないだ携帯見られたんだよな。で何だって?」


終わってからクミのベッドへ二人で移動し、落ち着いてからハルトが口を開いた。


「ハルトと別れてって」

「マジウゼェ。あいつ、そんな事俺に一言も」

「殺すって。旦那にも話すって言われたわ」

「大丈夫口だけだから。まぁ旦那には話してくれてもいいけどさ」


笑うハルトの顔は綺麗だが、もうクミの胸はときめかない。

自分の突然の心変わりに、ハルトが可哀想で、憐れむ気持ちにもなる。

好きになる気持ちも抑えきれなかったが、醒めて行く気持ちも止められない。

一度深い呼吸をして気持ちを整え、クミは別れを言おうとした。


「ハルト、私」






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                                       第43話へ


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kira-41wa

                                      第1話から読む方はコチラ




その夜タカシは、意を決して3年振りに自分のベッドにクミを引き入れ

恥ずかしそうな顔で、パジャマの前ボタンをゆっくりと外した。



抱いてくれるの?そんな資格なんて無い女なのに。



驚きと自己嫌悪の余りにクミは抵抗したが、タカシは止める気配がない。


・・・でも、でも嬉しい・・・まってた・・・

ずっと待ってたの。こんな日を。こうしてくれるのを。



クミの瞳が悦びで輝き、背中に手が回された瞬間に、タカシはため息をついた。


「あぁやっぱり駄目だ。ごめん・・・起たないんだ、俺」


さっきの気持ちを持続させようとしていたが、タカシのモノに血は昇らなかった。

奮い立たせる為に、妻の体から男の形跡を探しても、見当たらない。


「なんでだろ?病院にも行ったのにな」

「そうだったの・・・言ってくれれば良かったのに・・・」

「言えないよ。恥ずかしくて。・・・ごめんな、役立たずの息子で」

「・・・ごめんなさい・・・」

「なんでクミが謝るの?悪いのは、弱い俺だ。」


ううん。悪いのは私。そんな事、気付きもしなかった。

本当に最低な女。



「・・・もっと強く抱いて」


タカシはクミを強く抱き、唇と指で愛撫を始めた。

それはまるで優しく暖かい雨みたいに降り注ぎ、

嬉しさの余りに、クミの幸せの涙を誘発させる。


・・・うれしい・・・嬉しいわ・・・


少し煙草の匂いのする柔らかな髪の毛、骨ばった指、懐かしい肌の匂い・・・

心が悦びで震え、夫の存在全てが、クミを果てるよりも深い世界へと導く。

歓喜の涙を唇で吸われながら、精一杯の愛をも感じ受け取った。


寂しかった。二人で居るのに、一人よりももっと孤独だった・・・


この気持ちが伝わるように、とクミも唇と指で愛撫し、夫の肌を堪能した。

堕ちた穴を一人で彷徨い、闇の中を手探りで探していた自分の未来に

突然光が舞い込み、目の前が開け始める。


お願い、この手を離さないで。迷わせないで。

もう二度と一人にしないで。



夫婦で裸体を重ねる、そんな単純で当たり前の事実が、クミを変える。

どこからか降りてきた美しい光のオーラと、柔らかい旋律の音色に包まれて

乱れた心と身体までをも、強い力で浄化される。

クミは夫と言う聖堂の中で、全ての呪縛から、暗闇から解かれた新しい自分に

気付き、終わりの無い愛撫は、失いかけた夫への新たな愛を芽生かせた。













穏やかな朝を夫の腕の中で迎えた金曜日は、やはり全く違う曜日になっていた。

満ち足りているのに、しなければいけない事があり、それが容易に行かない事が

分かっているから気が重く、好きだった男の心を踏む事がつらくて苦しい。


ハルトはどう言えば納得してくれる?どうすれば別れてくれる?


夫を送り出し、悩みながら朝食の片付けをしていると、インターホンが鳴った。

出て行ってすぐだったので、忘れ物だと思ったクミは、ドアを開け息を飲んだ。


「何してんの・・・」


入ってきたハルトは後手で鍵を閉め、靴を脱いだ。


「もう来んといてって言ったやん。誰かに見られたら」

「大丈夫。誰にも見られてない。旦那が出てってから入ったし。

それより、可愛いじゃん。エプロン姿」



ハルトはあっけに取られているクミの左手を取り、無理矢理指輪を外して

自分のポケットに入れ、そして一度しゃがんで肩にクミを抱き上げた。


「どこでする?どこがいい?やっぱりベッド?

ソファも捨てがたいなぁ。どっちにしよう?」


「やめて。やめてよ。下ろしてよぉ!この家ではいや!お願い!」


一通り部屋を見てからハルトは寝室へ入り、起きたままの二つのベッドを見て

クミを乱暴に投げ下ろした。


「旦那のベッド、こっちだ」

「いやや、やめて、お願いやから。ここでは嫌。ほんまに嫌」


哀願するクミを無視して、ハルトはジーンズのベルトを外した。






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                                       第42話へ

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kira-40wa

                                      第1話から読む方はコチラ




もう何も考えたくない。考えられない。電源、切っとこう・・・


「いたっっ」


混乱した頭で包丁を持ち、切ってしまった指先が赤い血で滲む。




「ただいまぁ」

「あっおかえりなさい。・・・ごめん、残業でご飯がまだなの」

「いいよ。ビールで。なんかつまみさえあれば」

「ホント?良かったぁ助かる♪ねぇ、見て。切っちゃった」


微笑み、切った人差し指を咥えた妻の顔が、タカシには一段と綺麗に感じた。



やっぱり、男がいるんだな―






それまで、完璧すぎる程のクミだった。母親の作る料理よりも美味しい夕食、

部屋はいつも綺麗で花が飾られていて、シャツには糊がビシッとかかり

だらしない格好を決して夫に晒したりしない。タカシがあんなにこだわり

切望していた海外赴任は、結婚前のクミが言った事がきっかけだった。


「いつか海外に住むのが私の夢なの」


軽い気持ちで言ったその言葉が、

まさか未だにタカシの胸に大きく占めている事等、

クミは知らないままだ。

口にこそ出さなかったが、クミの夢を叶える事が

タカシの自分に課した夫の役割だった。

聡明で貞操な妻を愛する故に抱えているあらゆるコンプレックスも、

その望みを叶える事で開放されると信じていた。

それなのに、いつも掴みかける寸前で、その夢は逃げていく。

妻は優しく励ましてくれたが、弱いタカシには、逆にプレッシャーになった。



こんな俺じゃ、いつか失望されるんじゃないだろうか・・・



人事部にも「ウエタニさんに決まりそうですよ」と耳打ちされていたのに

辞令を受け取ったのは、コネで入った同期のヤマナカだった3年前のあの日。

荒れたタカシは部下とパチンコに興じ、不味い酒を飲み、

そのままのノリである店に入った。自分の知らない世界を見て、

気付かなかった奥底の性癖に目覚め

そんな自分が触れると汚してしまう気がして、自ら妻に背中を向け始めた。



やっとクミの汚点を見つけた・・・



その世界にのめり込むようになってから、普通の事にはどうしても起たなくて

困っていたタカシ自身に、熱い血が入ってくるような、そんな感覚に襲われた。


今なら、今のこの気持ちなら、クミを抱けるかも知れない。















ヒロユキに電話をかける為に携帯の電源を入れたハルトは舌打ちをした。

またミカから何度も着信とメールが入っている。付き合って2年になるが

ハルトは初めてミカにうんざりしていた。ここ最近のミカは度を超えている。

昨日ミカの部屋で逢った時は、あまりの怒鳴り声に、ハルトはつい

拳で殴ってしまった。床に倒れ鼻血を出したミカは、それでも泣きながら

狂ったみたいに「別れないから」を繰り返した。

そのまま放置して帰ってしまい、少々気がひけていたが、

そのままヒロユキに電話をかけた。


「おっせー。何してたんだよ。携帯の意味無くね?」

「悪い、何?」

「ミカが電話で自殺するって喚いてたぜ。お前、何したの?」

「・・・狂言だろ。死ぬって言ってるうちは死なないよ」

「馬鹿、行ってやれって」

「もう疲れた・・・別れたいんだよね」

「ハワイどうすんだよ」

「そうなんだよなぁ。それがあるからさ・・・」


いつも土曜日の夕方からサーフィンに出かけるクラブチームで、

気候の良い時にハワイに行くのは、もう3年も続いている恒例行事になっている。

そのチームには、ミカもヒロユキも、ヒロユキの彼女も入っている。

今回は、男3人の卒業旅行も兼ねているので3月の終わりで、

しかも10日間だ。



「ひょっとして・・・金曜日の女に恋ですか?ハルト様♪」


からかう電話口から煙草を吸う気配がし、やっぱり狂言だとハルトは思った。


「今からミカんち行ってくるわ。だりぃけど」


ハルトは車を止め、自販機でタカシと同じ銘柄の煙草を買った。

そして今日、肺に沢山吸ってしまったはずの、

タカシの吐いたニコチンを上書きする為に

ずっと昔にやめたはずの煙草に火をつけた。







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